聖なる隣人の物語
『無防備都市』(45)、『戦火のかなた』(46)などでイタリア・ネオリアリズモの巨匠と称されるロベルト・ロッセリーニが、アッシジの聖人フランチェスコと彼を慕う修道士たちの事績を、ユーモラスな描写も交えながら峻厳なスタイルで撮り上げた1950 年の作品。14世紀頃に精選された名詩選「聖フランチェスコの小さい花」と「兄弟ジネプロ伝」から着想を得て、1210年から1218年までのエピソードを導入部と9つの章により構成。当時の生活の細部も丹念に描かれ、中世を舞台にしたネオリアリズモ映画とも謳われている。
脚本はロッセリーニとフェデリコ・フェリーニの共同執筆。撮影は『戦火のかなた』、フェデリコ・フェリーニの『道』(54)などのオテッロ・マルテッリ。音楽はロベルトの弟で数々のロッセリーニ作品の音楽を手がけたレンツォ・ロッセリーニ。主人公のフランチェスコ役をはじめ彼と生活をともにする修道士は、実際のフランシスコ会修道士たちが演じている。
聖人フランチェスコとお人よしのジョヴァンニ、単純素朴なジネプロなど「小さき兄弟」たちの生きる姿は、苦悩と逡巡のなかにありながらどこか伸びやかで、21世紀の今を生きる私たちの心に清々しい風を吹き入れてくれる。
神の道化師、フランチェスコ
監督|ロベルト・ロッセリーニ
原案|ロベルト・ロッセリーニ(「聖フランチェスコの小さい花」「兄弟ジネプロ伝」より)
脚本|ロベルト・ロッセリーニ、フェデリコ・フェリーニ 撮影|オテッロ・マルテッリ 美術|ヴィルジリオ・マルキ
音楽|レンツォ・ロッセリーニ 製作|ジュゼッペ・アマート
出演|ナザリオ・ジェラルディ修道士(フランチェスコ)、アルド・ファブリッツィ(専制君主ニコライオ)
アラベラ・ルメートル(キアラ)、セヴェリーノ・ピサカネ修道士(兄弟ジネプロ)
原題|Francesco, Giullare di Dio 1950年|イタリア|モノクロ|86分|スタンダード
配給|コピアポア・フィルム / lesfugitives
神の道化師、フランチェスコ
監督|ロベルト・ロッセリーニ
原案|ロベルト・ロッセリーニ
(「聖フランチェスコの小さい花」「兄弟ジネプロ伝」より)
脚本|ロベルト・ロッセリーニ、フェデリコ・フェリーニ
撮影|オテッロ・マルテッリ 美術|ヴィルジリオ・マルキ
音楽|レンツォ・ロッセリーニ 製作|ジュゼッペ・アマート
出演|ナザリオ・ジェラルディ修道士(フランチェスコ)
アルド・ファブリッツィ(専制君主ニコライオ)
アラベラ・ルメートル(キアラ)
セヴェリーノ・ピサカネ修道士(兄弟ジネプロ)
原題|Francesco, Giullare di Dio
1950年|イタリア|モノクロ|86分|スタンダード
配給|コピアポア・フィルム / lesfugitives
各話の冒頭にあらすじが明示されるにもかかわらず、予測不可能で破天荒な面白さの連続に目が回る。大嵐で始まるこの世界の凶暴さはさらに度を超えて可笑しいほどに荒れ狂い、だがそれ以上に驚くのは、何度も不意に訪れる圧倒的な多幸感だ。丘を駆け下り、鈴の音に歓ぶ”兄弟たち”の顔は、微笑みと呼ぶにはあまりにも不思議な顔をしていて、見たことがない。
三宅唱|映画監督